No.14「思考の隙間」他

「思考の隙間」と題された静物画は東葛クリニック病院1階に展示されています。そしてもう1点の抽象画「無題」は、同じ作家による版画(リトグラフ)で、3階のロビーにあります。一方は具象、もう一方は抽象絵画です。一人の作家のなかに大きな変化を見ます。
白い空気の中に配置されたような具象のモチーフは、奥行きがあるような、そうでないような印象を与えます。それでいて確かなデッサン力をそなえ、清潔感あふれる画面は静謐(せいひつ)さを漂わせて、観る者に凛としたさわやかさを与えていないでしょうか?
作者は具体的な物を描くことから出発し、もう一方の版画に見られるように抽象画へと変化していきました。それは、描く対象物としての物より、物と物との隙間やその空気といったとらえどころのないものに関心が移り、それをイメージとして描くようになったからです。大胆で勢いのある、線と面が生み出す画面は、みずみずしい精気と力を与えてくれるようです。


作品解説:
彫刻家望月 菊麿