No.37「輝(かがやき)」

「輝(かがやき)」

今回は、東葛クリニック病院別館1階の待合室に展示されている自作「輝(かがやき)」について書かせていただきます。
現別館は40年ほど前、東葛クリニック本院として建設されました。その頃、アメリカの病院では、来院される患者さんやそこで働くスタッフのために院内環境を整え「患者さんに癒しを、スタッフには働きやすい環境を」というヒーリングアートの考えが導入、実践されていました。
当時の日本の病院といえば、全体的に基調色は白、壁も床も天井も白く、清潔感やメンテナンスが優先で、どちらかというと患者さんのためというより、病院管理優先の感があり、体や心を病んだ患者さんに沿うものとは言い難いところがありました。


その頃、アメリカの病院と交流のあった東葛クリニック病院は、いち早くその考えを導入し「病は気から」の“気”の部分を病の重圧から解放できるようにと、患者さんが長く過ごす待合室ホールに新しいデザインを持ち込みました。当時の病院としては画期的なもので、ホテルのロビーのような雰囲気に「ここが病院?」と、とまどうほどの空間づくりでした。そうした試みによって、ひと時でも、患者さんの気持ちを病から解放できるように努めたのでした。


それから40年経過した現在、日本の多くの病院でヒーリングアートが導入されるようになり、一般的な流れとなっていますが、東葛クリニック病院ではさらに充実を図っています。
今回、別館は心療内科の科目に合わせて改修することになり、今まで使われていた良質の素材を残しながら、患者さんの心を明るくできるように照度を上げ、鮮やかな色のソファーを設置しています。さらに、この空間で一番存在感のあるガラスブロックの壁を通して放たれる光を効果的に使い、金属版に金箔を貼ったオブジェを内包させて、ガラス面全体をアートにしました。


2011年の東日本大震災とそれに伴う原発事故は、日本人の心に暗い影を落とし、心を重くしています。アートもこの事象を多く取り上げ、警鐘を鳴らしています。しかしアートにはもう一つの面、明るい未来や夢、豊穣といったものを発信し、人々の心を高揚させる働きもあるはずです。今回制作した「輝(かがやき)」は、黄金に輝き昇る太陽や心、夢、未来といったものをイメージしたもので、患者さんに希望を持ってもらい、少しでも豊かな気持ちになっていただければと願いながら制作した作品です。


作品解説:
彫刻家望月 菊麿