院内美術散歩

No.21 「 i n g a u 」 No.21 「 i n g a u 」 No.21 「 i n g a u 」 No.21 「 i n g a u 」

光学理論や光学技術の発展とともに、絵画の表現も大きく変わってきました。そのことは19世紀後半の印象派の画家たちが、絵の具の色を混ぜずに、細かい一色ずつのタッチを並べる手法で、画面を明るい光で満たそうとしたことからも確かめられます。1960年代後半、ヴァザルリが先導したオプ・アートもまた、視覚構造の研究や光学技術の急速な発展と無関係ではありませんでした。ただし、前世紀の風景に対して、ヴァザルリの「i n g a u」と題された二点のシルクスクリーン版画のように、そこでは幾何学的な抽象図形が主役となっている点が違います。何の先入観も招きそうもない画一的な図形の規則正しい配列こそ、光や色彩のドラマが繰り広げられる舞台にふさわしいと考えられたのでしょう。画面にはただ変哲のない図形が並んでいるだけに見えますが、それを凝視していると目がチカチカしたり、そこにないさまざまな色が浮かび上がってきそうな錯覚にとらわれたりします。そうした現象が起こるべく形や色が念入りに配置されているからで、それこそがヴァザルリが見る側に仕掛けた狡知(こうち)なたくらみにほかなりませんでした。

作品解説:
美術ジャーナリスト三田 晴夫