No.03「1:1:√2」

東葛クリニック松戸の前庭にあるチタンでできたこの柱を、彫刻作品と思って見られる方はいるでしょうか。刻々と姿が変わる柱です。田中薫さんの制作による「1:1:√2」というタイトルの作品ですが、田中さんは日本でも最も早い時期にキネティックアート(動く彫刻)を手がけたキネティックアーティストです。


キネティックアートといっても、田中さんの場合は電気仕掛けで単純にただ動いているといった作品ではありません。田中さんの作品の多くはマイクロコンピュータの制御によって間欠的に動き、その時々でいろいろな表情を見せるように考えられています。
この作品の場合は、長方形の柱の中に2カ所、斜めに切られた節があり、その断面が正方形になっています。そして、3分ごとにそれぞれが90度回転して止まり、1カ所で4ポーズ、もう1カ所で4ポーズの変化を見せます。全部で16ポーズの形が生まれることになり、まことに豊かな表情を見せます。


この作品が病院のシンボルとして設置されたのには理由があります。まっすぐな柱がいろいろな形に変形し、また元に戻るという動きが、健康体の人が一時的に病気になり、病院で治療を受けてまた元の健康体に戻るという、医療の原点を象徴しているように思えるからです。この動く彫刻は、患者さんの快復と健康を願ってこの場所に設置されています。


作品解説:
彫刻家望月 菊麿