No.42「空路1987-A」

これまでに見たことのない立体的で硬質な表現

今回は「東葛クリニックみらい」の2階、透析ラウンジに展示されている清塚紀子さんの作品をご紹介させていただきます。
清塚さんは東京芸術大学油絵科専攻を修了し、当時できて間もない版画研究室で非常勤講師をしながら絵画と版画を両立、制作していましたが、版画の魅力にひかれ、軸足を版画の方へ移して発表を続けています。


師は画家の小磯良平氏、野見山暁治氏、版画家の駒井哲郎氏と、恵まれた環境で学び、美術界では先輩後輩として若い時代を過ごされました。 清塚さんの作品は当初、銅板のエッチングやメゾチント、アクアチント、ドライポイント等を駆使しての版画表現でしたが、その後、エッチング、シュガーポイント、アクアチント、コンデンサー、チューブ、ハンダ等と、銅箔や鉛箔を使い、今までどこにも見ることのなかった大型の版画の制作に入ります。


その表現は、それまで一般の版画界の紙の上の表現から大きく飛躍し、立体的で硬質な表現を手にすることになります。画家の野見山暁治氏は画集「清塚紀子航跡」(1989年美術出版)で、「彼女の最近の作品は、完璧に仕組まれた分厚い外壁みたいで、人の入れるような優しさはどこにも見当たらない。まるっきり重力を失くした宇宙ロケットか、深みにひそむ潜水艦の、その胴体のようだ。これは優しい人の夢想の乗り物かもしれない」と評しています。


清塚さんの作品は本院1階にも「空路1987-B」「空路1988-B」が展示されています。


作品解説:
彫刻家望月 菊麿