院内美術散歩

No.27 「1985 H - 6」 No.27 「1985 H - 6」 No.27 「1985 H - 6」 No.27 「1985 H - 6」

1960年代末期から発表を開始。当初は野外彫刻展にも出品するが、基本的には一貫して絵画の制作を手がけてきた。絵画は「絵そらごと」というのが持論で、人や静物、風景といった現実にある対象には関心を示さず、もっぱら具体的な形を持たない世界を色彩と筆触で表現している。カマボコ状に画面をふくらませたり、画面の縁を描いた筆触に合わせてギザギザにするなど、ユニークな試みにも挑む。個展やグループ展も多く、現代絵画を代表する一人として活躍中。厚みのあるレリーフ状の絵画で、左の作品は四角い箱の形で、右の作品は曲面にふくらんだ形をしている。いずれも濃いブルー系の色彩を基調とするが、その表面には幅の広い、扇形の痕跡がひしめく。その扇の縁に絵の具のたまりがあるように、フロントガラスの雨水を払う自動車のワイパーよろしく、扇形は絵の具を掃いた痕跡であることがわかるだろう。画家が使った道具は、ゴムのへらである。それは左右に強く振幅する動きを与えると同時に、表面の色彩を押しのけて、塗り重ねた下層の色彩を掘り出す働きも持つ。何やら深海とも宇宙ともつかない空間に、色とりどりの幻影が漂っているような感覚に誘われる。

作品解説:
美術ジャーナリスト三田 晴夫